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「ちゃんとしなきゃ」ではなく、「今どこ?」を見るための地図

  • 執筆者の写真:  かきのき教育支援室コンブリオ yukie
    かきのき教育支援室コンブリオ yukie
  • 2 日前
  • 読了時間: 10分

― 発達特性のある子を育てる親のための「現在地確認マップ」―


少し長めの記事ですが、うまくいかない日に何度でも開けるような、保存版の地図 としてまとめてみました。

発達特性のある子との暮らしでは、子どものことを思うほど、親の中に問いが増えていくことがあります。

どうしてこうなるんだろう。私の関わり方がいけないのかな…など。でも、そういうときに必要なのは、すぐに正解を出すことではなく、今どの状態にいるのかを見直すこと なのかもしれません。

この記事では、親子を「できている/できていない」で見るのではなく、現在地を確認して、回復の方向を見つけるための地図 として、「現在地確認マップ」という考え方をまとめました。

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発達特性のあるお子さんと暮らしていると、


  • どうして、いつもこうなるんだろう

  • 私の関わり方がいけないのかな

  • あのとき、もっとちゃんと伝えたほうがよかったのかな

  • それとも、厳しくしすぎたのかな


そんなふうに、自分への問いがぐるぐる回ってしまうことがあります。

子どものことを大事に思っているからこそ、うまくいかなかった場面を何度も思い返して、「もっと別のやり方があったんじゃないかな」と考えてしまう。発達特性のある子との暮らしには、そういう揺れが起こりやすいのだと思います。


ここでいう「発達特性」とは、診断の有無にかかわらず、

その子ならではの、感じ方・考え方・動き方の傾向

のことだと、ひとまず捉えてみてください。


そして、日々の「うまくいかなさ」の多くは、親子の努力不足や気持ちの問題というより、

その子の特性と、今の暮らし方や関わり方が、まだ少しかみ合っていない

ことで起きている場合が少なくありません。

つまり、誰かが足りないというより、今の運び方が、その子にまだ合い切っていない のかもしれない、ということです。


今日は、親子を「できている/できていない」で見るのではなく、うまくいかないときに迷子にならないための地図として、「現在地確認マップ」という考え方をご紹介します。



1.目標よりも先に、「方角」を持っておく


子育ての情報には、「こうできたらよい」「この声かけが効果的」といった、目標や正解がたくさんあります。

もちろん、それが助けになることもあります。でも、発達特性のある子との暮らしでは、目標そのものよりも、

今、どちらの方向に向かっているか

のほうが大事になることが少なくありません。

というのも、同じ“正しいこと”でも、今の状態に合っていなければ入らないことがあるからです。反対に、その場では遠回りに見えても、回復や安心の方向に向かっていれば、あとから流れが戻ってくることもあります。

なので、迷ったときのために、まずはいくつかの 方角 を持っておくと役に立ちます。


正しさは後で。まず回復

親子ともに落ち着いていないときは、どれだけ正しい内容でも入りにくくなります。伝えること、教えること、話し合うことは、少し落ち着いてからのほうが届きやすくなります。


努力を足す前に、設計を変える

「もっと頑張る」「もっと頑張らせる」より先に、手順、量、環境、伝え方など、やり方のほうを見直す ことが助けになる場合があります。うまく回らないときに必要なのは、気合いの追加ではなく、形の調整かもしれません。


毎日一定より、波込みで回す

「昨日できたのだから今日もできるはず」と思いたくなるのですが、実際には、その日の疲れや不安、刺激の多さで回り方はかなり変わります。波があることも、その子の特性の一部として見ていく視点が役に立ちます。


管理より、安心の確保

細かく見張るような関わりになるほど、不安や反発が強くなることがあります。まずは「ここは責められ続ける場所ではない」と感じられることが、次の動きの土台になります。


失敗ゼロより、やり直せること

失敗をなくすことよりも、失敗しても関係が切れず、また戻ってこられること。そのほうが、長い目で見ると親子の暮らしを支える力になります。

うまくいかないとき、「これで合っているかな」だけでなく、「今、この方角に向かえてい

るかな」と見てみると、選び方が少し変わってくることがあります。


2.「今どのあたり?」を、4つの地点で見てみる


次に大事なのは、現在地を見ること です。

同じ声かけでも、同じ工夫でも、今、子どもと親がどんな状態にいるかによって、入るときもあれば入らないときもあります。

つまり、「よいやり方かどうか」だけではなく、今そのやり方が入る状態かどうか を見る必要がある、ということです。

ここでは状態を、4つの地点としてイメージしてみます。


● 平地

  • 会話が比較的通りやすい

  • 親子ともに心と体に少し余裕がある

  • 話し合いや調整が入りやすい

このあたりでは、相談や約束、やり方の工夫などが通りやすい状態です。親子で一緒に考えることもしやすい地点です。


● 坂道

  • 切り替えに時間がかかる

  • 疲れやすい

  • いつもよりイライラしやすい

  • 「いつも通り」が少し重たい

この地点では、本人も親も、思っている以上に負荷がかかっています。大きな問題が起きていなくても、がんばればできる前提で押していくと、あとで崩れやすくなります。量を減らす、説明を短くするなど、少し軽くする工夫が必要です。


● 渋滞

  • 反発が強い

  • 強い言葉が出る

  • 癇癪、無反応、固まるなど、やりとりが詰まりやすい

  • 何を言っても、さらにこじれやすい

この状態では、内容の正しさよりも、通らなさそのもの が前に出ています。説得や正論を重ねるほど、渋滞が深くなることもあります。この地点で必要なのは、前に進ませることではなく、まず詰まりをゆるめることです。


● 荒天

  • 睡眠不足

  • 刺激の多さ

  • 不安の高まり

  • ちょっとしたことで一気に崩れやすい

  • 親の側にも消耗がたまっている

何をしても噛み合いにくく、親子ともに守りに入りやすい状態です。こういう日は、「何が正しいか」を考える日というより、これ以上崩さずに一日を越えること自体に意味がある日 かもしれません。


3.「困った行動」ではなく、「今出ているサイン」として見る


親が苦しくなりやすいのは、出来事そのものだけではなく、そこにどんな意味を貼ってしまうか、という部分も大きいです。

同じ場面でも、見方が少し変わるだけで、心の重さが少し変わることがあります。


「分かっているのに、できない」

これは親にとって、かなりつらい場面です。「分かっているなら、どうしてできないの」と感じやすいからです。

でも実際には、理解できること実際に動けること は、別の力を必要とすることがあります。

このとき見直したいのは、気持ちや根性よりも、手順、時間、環境、切り替えの負荷などです。「分かっているのにできない」は、責める材料ではなく、設計を見直すサイン かもしれません。


反発や強い言葉が出る

強い返しがあると、親も傷つきますし、しんどくなります。でもその奥には、反抗心というより、もうこれ以上は入らない という限界のサインがあることがあります。

このとき必要なのは、内容をさらに積むことではなく、情報量や要求の量をいったん下げることです。言い返しの奥に、しんどさが隠れていることがあります。


無反応・固まる

返事がない、動かない、目をそらす、固まる。こういう状態は、外から見ると「聞いていない」「向き合っていない」ように見えることがあります。

でも実際には、それは怠けではなく、これ以上入れると苦しいから止まっている状態 かもしれません。

ここで押し続けると、さらに遠のいてしまうことがあります。少し距離を取る、時間を置く、刺激を減らす。そうした関わりが、結果的に戻り道を作ることがあります。


できる日とできない日の差が大きい

昨日はできたのに、今日はできない。その差が大きいほど、親は混乱しやすくなります。「できる力はあるのに」と思うからです。

でも、体調、睡眠、不安、刺激、人とのやりとりなど、その子の回り方には、たくさんの条件が影響しています。ムラがあるというより、条件によって動きやすさが変わっている のかもしれません。

その日の状態に合わせて運び方を変えることは、甘やかしではなく、回り方に合わせた調整です。


4.うまくいかないときは、「回復ルート」に戻る


渋滞や荒天のときは、何を言うかよりも、どの順番で戻るか が大事になります。


① まず、状態を整える

最初にすることは、内容の話をいったん横に置くことです。

  • 言葉を減らす

  • 刺激を減らす

  • その話題を保留にする

  • 水分をとる

  • 姿勢を変える

  • 少し離れる

ここで大事なのは、

今は、話し合う時間ではない

と見極めることです。

話し合いが入らない状態のときに話し合いを続けると、内容そのものまで嫌なものとして残りやすくなります。まずは、これ以上悪化しないところまで戻すことが先です。


② 次に、関係を戻す

状態が少し落ち着いてきたら、今度は「どちらが正しいか」ではなく、

  • ここにいて大丈夫

  • 関係は切れていない

  • さっきのことで、あなた全部が否定されたわけではない

という感覚を戻していきます。

  • 声のトーンを少し落とす

  • 「さっきはお互いしんどかったね」と一言添える

  • お茶を出す

  • そっと隣に座る

こうした小さな動きは、思っている以上に大事です。言葉にならない安心が、次のやりとりを支えることがあります。


③ そのあとで、設計を変える

状態と関係がある程度戻ってから、ようやく「どう進めるか」を考えます。

  • 指示や説明は短く、一度にひとつ

  • 手順を減らす

  • 紙に書き出す

  • 見える場所に貼る

  • 「いつものやり方」と「最低限のやり方」を分ける

ここで大切なのは、

努力を増やす前に、形を変える

という視点です。

「この子はやればできるはず」と思う前に、この形だと回りにくいのかもしれない と見てみる。それが、責める方向ではなく、整える方向につながります。


④ 小さく再開する

最後は、いきなり元通りに戻そうとしないことです。

  • まずは少しだけ再開する

  • 回りそうなら、少しずつ広げる

  • また詰まってきたら、回復ルートに戻る

大切なのは、

前進より、再起動

という感覚です。

一度止まったあとで、少しでもまた動き出せたなら、それは十分に意味のある回復です。


5.「できた・できない」以外の変化を見る

暮らしが整っていくとき、変化はいつも分かりやすい形で表れるわけではありません。

でも実際には、こんな変化もとても大切です。


  • 親が、自分や子どもを責める時間が少し減ってきた

  • 強い言葉が出る日があっても、関係が決定的には切れにくくなってきた

  • 崩れることはあっても、前より戻り方が分かってきた

  • 戻るまでの時間が少し短くなってきた

  • 親がずっと張りつめるのではなく、休むことを少し意識できるようになってきた


こうした変化は目立ちにくいのですが、こういう変化こそが、親子の暮らしが“無理に保つ”から“回りやすくなる”ほうへ動いているサイン です。


おわりに――迷子になったら、地図をひらく


この「現在地確認マップ」は、親子がちゃんとできているかをチェックするための表ではありません。

そうではなく、

うまくいかない日に、今どのあたりにいるのか を見直して、その日に必要な一手を決めるための地図

として使ってもらえたらと思います。


もし今日、何も変えられなかったとしても、

  • 今日は荒天かもしれない

  • 今は渋滞の地点なんだな

  • まず戻すことのほうが先なんだな

と見立てを置き直せるだけでも、十分に意味があります。


それだけで、

  • 私の関わり方が全部いけないんだ

  • この子が悪いんだ

  • もっとちゃんとしなければならないんだ

という重たい結論から、少し距離を取ることができます。


しんどい日がまた来たとき、このマップを思い出してもらえたらうれしいです。

その日は、前に進む日ではなくても大丈夫です。

現在地を確認して、回復ルートに戻る日

そういう一日にも、ちゃんと価値があります。


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